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EV充電インフラ整備でつなぐ「グリーンロード」–プラゴと自治体が新たな観光人流の創出に挑む

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 8月30日から2週にわたり開催されたCNET Japan 「不動産テックオンラインカンファレンス2022 スマートな住まいや街がもたらす暮らしのイノベーション」の9月7日のセッションでは、独自のアプローチで電気自動車(EV)充電サービスを提供するプラゴの代表取締役 CEO 大川直樹氏が登場。「EV充電インフラで観光人流を創出する新しいまちづくり グリーンロードプロジェクトの取り組み」と題してプレゼンを行った。

(右下)プラゴ 代表取締役 CEO 大川直樹氏、(左上)CNET Japan編集部 藤代格
(右下)プラゴ 代表取締役 CEO 大川直樹氏、(左上)CNET Japan編集部 藤代格

 プラゴは、EVの充電インフラの整備を軸とした事業を展開している。整備を進める際には、単に充電器を売るだけでなく、アプリを用いたユーザー体験の設計、再生可能エネルギー(再エネ)の活用による環境負荷の低減、充電器を設置する際の景観への配慮、そして当セッションのテーマにつながる人流創出による地域活性化など、さまざまな取り組みも併せて行う。

 「ただ単に充電器が足りないからたくさん設置しましょうという事ではなく、充電を通じた新しい体験を創ることで、EVに乗って良かったという経験、体験を提供していく。結果として電気自動車を選択する人を増やして、サステナブルな社会を実現していくことに貢献できるという仮説の元で事業を進めている」と、大川氏は自社の活動を説明する。

 同社が解決を目指す社会課題は大きく3つ。1つ目は、充電器が足りていない問題である。その際、数と並行して質の問題も検討していく。例えば現在、自宅で充電ができないEVユーザーが多いなどピンポイントの課題も多いため、「場所の立地戦略を含め、数を追うだけではたどり着けない部分でのデザイン戦略が必要」と大川氏は訴える。

 2つ目は、新たに普及していく社会インフラとして、サービスやプロダクトのデザインをどうするか。大量に設置される充電器が視覚的なノイズとならないようにする景観問題や、UX(ユーザー体験)をどう高めていくかに対応していく。

充電の予約や充電中のレコメンド機能など前後の体験も提供

 そして3つ目は、設置する施設や地域がそもそもEVインフラを整備する動機が持てていないという問題である。現在は国から補助金が出るようになっているが、まだ設置側の動機としては不十分なため、それ以外のメリットをどう作っていくかも考えなければならない。プラゴは、EVユーザーと設置する施設、地域をつなぐ充電体験の創造を提供しており、そのノウハウをコアバリューとしている。

 「私たちのサービス戦略としては、充電器としての機能だけではなく、充電前の予約やサービスのレコメンドなど前後の体験も提供していく形となっている。充電の全てが再生可能エネルギーなので、再エネ充電でエシカル消費も体験できる。充電中、充電後はクーポンを出して商品につなげたり、二次交通と連携させたりすることなどによって、充電時間をデザインしていく。それらをトータルで価値提供する」(大川氏)

 具体的なサービスとしては、目的地施設における充電予約を実現している国内唯一のEV充電予約アプリ「Myプラゴ」を提供。アプリから予約をして出掛けた際に確実に充電でき、決済まで自動で行えるというユーザー体験を提供している。

EV充電予約アプリ「Myプラゴ」の仕組み
EV充電予約アプリ「Myプラゴ」の仕組み

 プロダクトとしては、7種類のカラーバリエーションを備えた普通充電器「PRUGO BAR」を提供。外装の着せ替えができ、空間に溶け込むスタンドとなっている。また充電器としては、ほかにもコンセプトモデルとして、車止めを充電器にする「PLUGO BLOCK」も発表。極力景観に溶け込むプロダクトを開発している。その後の9月29日には、急速充電器「PLUGO RAPID」の提供開始も発表した。

車止めを充電器にすることで元あるものに機能だけを付加するコンセプト
車止めを充電器にすることで元あるものに機能だけを付加するコンセプト

「グリーンロードプロジェクト」でEVツーリズムの普及を目指す

 同社がEVsmartと共同でEVユーザーの実態を調査した結果によると、特に都市部では4割強が自宅で充電ができない“充電難民”で、外出する際に目的施設での充電が求められているという。更に事前に充電スポットを調べる人は10割に近く、行き先として充電器がある場所を選んでいる人は8割以上。また、遠乗りをする際に高速道路のパーキングなどで充電待ちを経験した人は半数以上にのぼるとのこと。

 そのような足元の状況に対して、同社は現在複数の地方自治体と共同で、新たな観光の形である「EVツーリズム」を支える充電インフラの整備と、それを世の中に発信していく「グリーンロードプロジェクト」を展開している。同プロジェクトでは、例えば道すがらの街に充電器を設置し、広域連携して新たな国道のような「グリーンロード」を作ることで人流を形成していく。また各地域で充電中にマイクロモビリティに乗り換えて地域を回遊してもらい、その際にはクーポンを発行して消費も促すという取り組みを実施している。

グリーンロードプロジェクトの概要
グリーンロードプロジェクトの概要

 フェーズ1では、自治体と包括連携協定を結び、エリア内の公共と民間の充電器を増やしてEVで来てもらうためのインフラを作る。加えて、そのエリア内にある観光資源や地域の価値について、プラゴのオウンドメディアやパートナーと情報発信をしていく。更に地域の民間企業に協力してもらいながら、ホテルなどに充電器を設置してもらう取り組みも行い、地域を挙げてEVユーザーを誘致する取り組みを推進していく。その際には、どういう形で何年までに何台くらい設置していくかというグランドビジョンを描きながら、話を詰めていく。

 「例えばEVでその地域を訪れ、私たちの充電器が設置してあるホテルに宿泊してもらう。ホテルの充電器の横には電動モビリティが置いてあって、自分の車を充電している間に乗り換えて地域を回遊してもらう。そこで使う電気は、地域で作った再エネを充てていく。それによってエネルギーの地産地消にもつながる」(大川氏)

自治体とのEVツーリズム構築モデル
自治体とのEVツーリズム構築モデル

長瀞町、小布施町、軽井沢町と取り組みを開始

 プロジェクトの第1弾として、埼玉県長瀞町(ながとろまち)とEVツーリズムの取り組みを開始している。プラゴの充電器を長瀞町のホテルやキャンプ場や観光施設に設置し、その横に電動バイクを配置。電動バイクで移動できるエリア内のお店のクーポンを配布して、地域を活性化していく取り組みを継続して行っている。

 「実際に長瀞のキャンプ場に記者がEVで行き、EVキャンプを体験してその魅力を記事として発信した。そのほかに充電時には、充電を開始すると電動バイクのクーポンが配布され、電動バイクを借りて充電時間中に移動し、おやつを食べたりライン下りをしたりして帰ってくると充電が完了している。そのような新しい旅の形をデザインしている」と、大川氏は同地での取り組みの趣旨を語る。

長瀞町での取り組み
長瀞町での取り組み

 ほかにも、長野県下で小布施町および軽井沢町と包括連携協定を結び、グリーンロードプロジェクト推進に向けた取り組みを開始しているという。「これらの取り組みが、これからだんだん線になっていくというイメージ。欧州では、EVツーリズムを政府が主導して実施しているが、まだまだ日本では一般化していないので、私たちが充電インフラの整備と自治体との取り組みで地域活性化をしながら新しい旅の形を作り、社会実装していきたいと思っている」(大川氏)

近接する2つの町と連携してグリーンロードの整備を目指す
近接する2つの町と連携してグリーンロードの整備を目指す

補助金を使ってEV充電器を立てるだけでは意味がない

 プレゼン終了後、視聴者およびCNETからの質問に大川氏が回答した。地域にEVが増えるメリットについては、「まずEVユーザーは、現在は6割以上がガソリン車との2台持ち状態である中で、目的地にちゃんと充電器があればEVでも安心して出かけられるようになる。その際にプラゴがデザインしたサービスを利用すると、新たな発見が生まれて新しい未来の体験価値を得られる。また地域社会にとっては、脱炭素以外にも人流が生まれて地域共生が生まれ、防災面でも地域にEVが増えると蓄電池が増えてレジリエンスが強化されるなどのメリットがある」(大川氏)という。

 次に、日本のEV普及率について。「EV化が最も進んでいるノルウェーでは2022年6月の新車登録台数のうち、BEV(完全電気自動車)が78.7%を占める一方、日本は2.1%で過去最高という状況。7月では世界全体でBEVが10%という結果となり、世界では徐々にEV化が進んでいるが、日本はまだまだ遅れていると言わざるを得ない」(大川氏)としている。

 3つの自治体との取り組みで成功しているポイントと課題については、まずどのようなビジョンで充電インフラを整備していくかという共通認識を得られていることが現時点での成果であるとする。

 「日本政府も2030年までに急速充電器を3万基、普通充電器を12万基で合計15万基設置するという目標を出しているが、数だけで進めでしまうと結局設置しておしまい、になってしまう。過去の補助金政策が設置だけが目的となり、あまり使われていないことを課題と捉え、ちゃんと使われる場所に使われる形で必要な台数を設置していくというビジョンを一緒に描きましょうというところをお話しできている」(大川氏)

 また同社の事業展開については、日本の充電インフラ整備計画ではマンションへの充電施設の設置や高速充電に力を入れており、EVツーリズムの推進には力を入れていないため、「私たちが民間企業の立場からその部分をフォローしていく」(大川氏)とのこと。「今は知見を溜め、サービス開発に取り組んでいる。仮説検証を繰り返し、型を見つけて来年もしくは再来年に一気にスケールさせていく」(同氏)と見通しを述べた。

 なおプラゴが提供する普通充電器の充電時間は1時間に4キロワットで、現在は主に観光地やゴルフ場、ホテルなど7~8時間車を泊める場所に設置しているという。設置コストは、工事費が変動要素として大きいため設置する場所によって変わってくるとのこと。「基本的にオーナーの負担になるが、成果を検証するために一部初期費用を我々が負担するモデルも検討している。個別案件ごとに相談させていただきたい」(大川氏)としている。



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